くるくるばたばた

主に東方SSの解説や感想と、稀に漫画とかラノベとかその他。

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東方SSメモ92
 創想話無印で面白かった作品を、作品集ごとに個人的にメモする記事、作品集92にて。


『ラストプリンセス娘の挑戦』(胡椒中豆茶氏)

 私は月から離れられない。それは永琳もわかってる。私はいつの日かマー君ワールドに一人ぽっちだ。
 永琳の本当の友だちになりたかった。でも出来ないから、この兎を代わりにした。
 そして永琳は兎だけを連れて行ってしまう。しょうがない事だ。しょうがない事。私は誰も責められない。 
 でもさ。じゃあ。私って。私ってなんなのよ?
 なんなんだろうね。ほんと。

 脱帽。昨年見た東方二次創作で五本の指に入るかもしれない。少なくとも十本には確実に入る。そして『電子レンジからの生還者(マイクロウェーブ・リターナー)』は間違いなく最高のオリキャラ。
 青春ものという看板に偽りなし。もう個人的にカグヤへの感情移入っぷりが半端なくて、伝わってくるというよりも入り込んじゃう感じで、ちょっと泣きそうになった。たぶん私の精神面と波長が合ったってのも一因なんだけど、この魅力的で卓越した一人称のおかげでもあるんだと思う。見栄っ張りで、憧れて、だけど自分では足りないってことをまざまざと見せ付けられて、どうにかしたくて、だけどどうにもできなくて……なんでこんなにもうまく書けるのか。

 もう、単品としてすら恐ろしい練度で仕上がってる。とにかく読めとしか言い様が無い。
 ……そう、単品としてすらです。何がすごいかって、これが永夜異変までを描かれる連作の一つ目で、そして東方二次創作であるということ。

「泣かないでよ、まりな。私、別にあんたが嫌いで一人で行くわけじゃないもん。逆よ。あんたに憧れるだけじゃなくて。悔しがるんじゃなくて。あんたをね。もっと私は真っ正面から、大好きだって、正々堂々と言いたいから」

 だから、いつかカグヤは成るんです。永琳を自身と共に地上に留まらせるくらいの、蓬莱山輝夜というお姫様に。永琳の本当の友だちに。成りたいと心から願っていたものに。
 まりなという存在(と、その消失?)や、妹紅のことも考えると、それは思いのほかに曲がりくねったものかもしれないのですけども。とかくカグヤは、いずれ語られるであろうこの物語のクライマックスでは、最終的にあの場所にいる。
 私達がよく見知った、永夜異変の最後のボスとして。隣に立ちたいと思っていた永琳を、従者として。そしてもしかしたら、その先も。永夜異変すら、彼女の何らかの救いとして描かれるのかもしれない(永夜異変まで書いた、というのがどういう意味なのかよくわからないので、確かでは無いけど)。

 あの場所に至るまでにカグヤにどんな苦難があって、どんな変化があって、どんな決意があるのか。彼女と永琳に大きな影響を与えたまりなは、どうなるのか。少なくともまりなというキャラは、永夜抄にはいない。もしも、もしもいなくなったというのならば、輝夜はどうやって永琳を救うんだろうか。
 それらがどんな物語として綴られていくのか、想像するだけで泣きそうになる。
 これが完結した時には、永夜抄組を扱った作品として最強のものになるんじゃないかと、本気で思っています。



『ミリセカンドの恋』(碑洟氏)
 これ、すごくいい。スパンと斬られた気分。
 たしかにコメ50にあるように、冷静に考えると名無し妖精の視点としては小難しい言葉を使いすぎなんじゃないかとは思わなくもないけど、個人的にはやっぱりぜんぜん気になりませんでした。特異な妖精というのが言い訳になってると思うわけでも無いけど、むしろこれくらいなら新鮮味と独自色を感じる。妖精の視点に沿った簡単な文章もありだと思うけど、個人的にはこのくらいの、どちらかというと読み応えある(?)文章のが好きで。
 名無し妖精の、恋のお話。霊夢に恋した彼女の長い長い、強い強い想いは、けれど本当にあっさりと「流れ出て」失われてしまう──妖精という種族に与えられた設定。やられても死ぬことはなく、再生すること。元々の枠を、小さく作られていること。それらをすごく上手に料理された感があります。



『夕餉 ~ルーミアの焚き火』(野田文七氏)
 この仄暗い雰囲気は何だろう。
 人と妖怪。霊夢とルーミア。二つのものが二つのものとして描かれて。でも、なんだろう。交わってるかというと、少し違う気がする。人と妖怪との関係を描いたものは数あれど、これはそれとも少し違って、そこでの人のやり方と妖怪のやり方とを描いている、とでもいうんだろうか。
 違いがうまく説明できないし、違っていたとしても、そういうものだって今までにはいくらでもあったんじゃないか、って思われるかもしれないけど。ただこの雰囲気はまた少し違って……そう、後書きにヒントを得たというわけでもないけど、蓬莱人形に近いものがあると思う。
 風地星では失われたように思う何か。紅妖永では薄れていったように思う何か。かといって旧作にそれがあったのかというとまた違う──そう、蓬莱人形の空気。霊夢というキャラを使いながらそれを味わわせてくれるという、稀有な作品でした。



 続き待ちというか、最後まで投稿されてるところにたどり着いたら読むかも
・『人間らしく、妖怪らしく』(pys氏)
・『その揺らめきは妙なる貪り』(こうず氏)
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東方SSメモ91
 創想話無印で面白かった作品を、作品集ごとに個人的にメモする記事、作品集91にて。


・『水蜜桃』(野田文七氏)

 「わからないさ。自分が本当は何を望んでいるか。どうすればそこにたどりつけるのか。みんな、暗闇の中で手探りするだけだ。わかっているのは、聖を救いたいということだけ」

 星蓮船前日譚、メインキャラは村紗水蜜。これすごくよかった!
 聖を、自分だけの聖を求めて、過去を変えようとする村紗。暴走する彼女を止めようとするナズーリン、一輪、星……とストーリーを簡潔に言ってしまうとそんな感じなんだけど、その色付けが凄くいい。キャラクターが真っ当に魅力的。信念があり、過去があり、それぞれがそれぞれに村紗と対峙して。本気で戦って。わりと戦闘シーンで尺を取ってるんだけど、だからぜんぜん飽きさせない。
 そして、その末にたどり着くところが。ああ、と思わず呟いてしまう、がむしゃらで、だけど甘くて、綺麗で。星蓮船メンバーいいなあと思わせてくれた。

 難があるとすれば……少し視点がごっちゃになるところがあった気がするのと、あと、メンバーの関係が完成しすぎていて、白蓮やぬえが加わったらどうなるのか逆に気になるところとかでしょうか(笑)
 ともかく、オススメの星蓮船SSです。




『【墓場にて】』(歪な夜の星空観察倶楽部氏)の空気は他に変えがたい……氏のシリーズは、全部を一気に読んだほうがいいんだろうなあ。
『もう一つの風神録』 (詩所氏)は完結してからの楽しみにしようと思っている。
『ray of change』(ロディー氏)は好きなんだけどいろいろ惜しかったと思わせてくれたので某所でボコボコにしましたが反省はしていない。ロディーさんの次回作にご期待ください……!
『メイフラゎー契約』(ら氏)がバランスよく作られたコメディで面白かった!
『秋は短し食せよ乙女』(えび氏)におけるメリーと蓮子の雰囲気が凄くいい。良作短編。
『青く漣を染めて』(日間氏)がとても鮮やかな短編でした。まずネタ的に、それをもってくるかーって感じ。
『月齢28.9の既望』(神田たつきち氏)は作品としては少々物足りないところがあるというのが本音だけど、全体的にセンスを感じる。作者さんのシリアス作品に期待。
『中秋』(蒲公英コーヒー氏)はたしかスレで話題になってたんだったかな、なるほど後味の良いオリキャラ良作でした。
東方SS投稿な報告「ゆかれいむシンドローム」
 なんか投稿してたらしいです。

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東方SSメモ90
 創想話無印で面白かった作品を、作品集ごとに個人的にメモする記事、作品集90にて。
 作品集89は後回し……。



◎『霧雨魔理沙23才の霊夢 -Stand Up To- 』(みづき氏)
 『無重力落下 -Stand By Me-』の続き。両方あわせてもそんなに長くはないので、ご一緒にどうぞ。

 さて。『無重力落下 -Stand By Me-』のほうは霊夢の能力のいち解釈といった形だったのでありまして、全体としては『無重力落下 -Stand By Me-』が霊夢の話、『霧雨魔理沙23才の霊夢 -Stand Up To- 』が魔理沙の話、という印象を受けるかもしれません。というかたぶんそれで正しいのですが、私は読み終えたとき、両方合わせて霧雨魔理沙の話という印象を受けました。後編が前編を喰って亜種に進化したって感じかしら。というのも、後編において霧雨魔理沙というキャラクターをかっちり描写している一方、前編において博麗霊夢の心情があまり描写されてないというか、うーん、そういうキャラということで描いてるのかな。まあともかく、少なくとも結果として、魔理沙の方が細かく深いところまで描き出されてる感じがするので、魔理沙のお話に見えたのかな。まあそんなことはどうでもいい。

 根本は、霧雨魔理沙の博麗霊夢に対する感情。これだけならわりとよくある感じなんですが、それを、霊夢がいなかったらというIFを手段として効果的に描いてるんですね。霊夢の能力解釈である『無重力落下 -Stand By Me-』を前提としてそれを行うことで、無理矢理IFをしてるという印象を排除、それどころか説得力を出してる。
 個人的にIFものが大好きだというのもあって、すごく楽しめました。心の中の芯となっていたものを失い、普通の人間へと戻りつつある魔理沙。若き頃を思い返しながら、それでも霊夢の存在を忘れて、あの言葉遣いも変わらずにはいられなかった魔理沙。普通の人間として生きる選択が近づきつつある、23歳の魔理沙。この、乾いた魔理沙の描き方が……コンペの「《明日ハレの日》∽《ケの昨日》」でも思ったけど、このあたりが本当に上手。同じ人間である咲夜との関係、それも含めて。

 そして、霊夢の結末がまた。もうこれ以上無いほどに「それっぽい」。
 「浮いている」というのもあるけど、無重力落下の時点で、霊夢はそれほど癖のないタイプの霊夢として──比較的普通の女の子として描かれていた気がします。だからだろうか、この終わり方が、本当にそれっぽくて、本当に心に来た。
 この終わりのその後と、『無重力落下 -Stand By Me-』における二人の共同生活のところは、想像力を働かせるべきところかもしれません。共同生活の中で、魔理沙は何を思っていたのか。この後、魔理沙と霊夢はどんなふうに生きていくのか。
 霧雨魔理沙と博麗霊夢を描いた作品として、文句の付けようのない作品でした。未読の人はぜひ読むべしです。



・『二回だけ死んだ猫』(フリーダム鈴木氏)
 オリジナルぬこと、幼い頃の紫のお話。ゆかりんかわいいわ。
 ほのぼのしい雰囲気に孤独の影を見え隠れさせる、そのさじ加減が好み。話そのものはオーソドックスだけど、『境界の狭間』という舞台装置や、臆面なくロリロリしいゆかりんはやや珍しい類か。

 いくつか気になったこととしては、まず、オリジナルぬこの半生、特に、運命を見る能力への憂鬱等々をもう少しきっちり書いたほうが、最後に『だれかを幸せにする』ことが映えたんじゃないかなとまず。
 そして終章がちょっとくどいかなというのと、もう一つ……紫の孤独は、もう少し徹底的にやってしまってよかったんじゃないかなと個人的には思うかもです。具体的には、『迷い込んでくる人たち』にはいつも例外なく気味悪がられたり化け物扱いされていたりだったとか。

 ……といった感じに細かい点で幾つか気になったところはありましたけども、基本的にかなり楽しめるお話でありました。ありがたやありがたや。



・『夾竹桃』(twin氏)
 ・『吹き、荒れる、風』の続編。
 実はお話自体はわりと単純なものである気はする。
 しかし意外でもあるのですが、霖之助絡みでこうもガチな恋愛ものを書いてくる人ってのは実は少なく……こう、お話自体はわりと単純ではあるのに、どこかしら新鮮さを感じさせるという。
 森近霖之助、八雲紫、東風谷早苗。三者の九寸五分の恋の、その果て。必ずしもハッピーエンドでは無いかもしれませんが、それが、少なくとも創想話では作者さん特有と言ってもいいでしょう、濃密な描写によって描き出されています。

(濃密だとは思うし凄いとも思うけれど、正直濃すぎてよくわからんところがある気はするのは秘密)



 そのほかには、『平成十三年の夢綺譚』(ぜろしき氏)、『人形は、これでもいいと思いました』 (歪な夜の星空観察倶楽部氏)が面白かったので、メモしておきたく。

『UNDERGROUND』 (佐藤厚志氏)超面白かった。続き待ち。
・『Q.E.F』(みかんの国の住人氏)シリーズは全部出揃ってからじっくり読む。
『スカーレット家の運命 【前編】』 (シラタキ氏)もちょっと気になるけど、やや長いっぽいので後編が来たら読む。

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