くるくるばたばた

主に東方SSの解説や感想と、稀に漫画とかラノベとかその他。

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東方同人誌感想「アリスのための物語」
 おもについったで垂れ流したやつの転載です。
 読んだ東方同人誌(漫画、SS問わず)について、なんか気が向いたときに適当に書いたりしたやつです。
 記事タイトルに「感想」ってあるけどたぶんあんま感想ちがう。



・アリスのための物語(La Mort Rouge)

「アリスのための物語」読了──ラブコメだ! みんな逃げろー! いや読めー!

というわけで「アリスのための物語」です。文庫580ページ超、しかもこれ一ページあたりの文字量が普通の文庫小説本より多い気がする。超大ボリュームです。その大ボリュームで何をしているのかというと、もちろんアリスの話です。

アリスの話──そもそもアリス・マーガトロイドとはどういう存在かという定義に始まり(当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが)。 幻想郷におけるアリスの物語の始まりから、そしてまたひとまずの始まりへと、それらをアリス一人称ですごく丁寧に描いていったお話。

そう、すごく丁寧です。伏線……いや読みながらはっきり引っかかるあたりだから前振りと言いたいかな、ともかく、読んでて途中で引っかかるようなことはまず回収されるし、あと、細かな描写がすごく丹念に為されてて、描かれてる世界を汲み取りやすい(そうでなければここまで長くはならない)。

(ただ、丁寧すぎるのに難があるかもと感じたところは否定できない……エピローグがほとんど種明かしオンリーになっちまってたりもしますし。どうなんだろう、狂気を描くことと、ある種三人称的な描写の丁寧さは、もしかしたら両立しがたいものなのかもとかちょっと思いながらでした)

狂気を描くというのは……特に、一人称で狂った当人を描くというのは、本当に難しいよなあと感じます。というかたぶん、「ああ、このひと狂ってる」と思われたらその時点でタイムリミットが発生するような気がする……主人公が狂っているのだと理解されてしまったら、(続く)

物語そのものを滑稽なものに見せようとするベクトルが、どうしても働いてしまうと思うから……余程のことがないかぎり。そしてこの本に関して言うなら、丁寧な──というより単純に言って長い、その一事と重なって、「アリスさんがあからさまに間違った理解をして暴走する話」を(続く)

けっこう長い間見ることになる……もちろん、そんな「あからさまな間違い」をしてしまうようなものこそが、アリスさんだったということなのだけど。……うむ、うぬ、何か読み間違いをしているような気がしてきたぞ。

プロローグを読み返すべきのような気がしたんだ。

一つ仮説が生まれたんだけど、これ検証するには再読しなくちゃいけないお……ちょっとそれはきつい、少なくともいまは。

というかたぶんちがうかなこの仮説は……うん……。

お話のつくりに関して。旧作設定に関する作り方が面白い(設定無視してるとも言えるけどw)のですが、パッと見るとねじれがあるように見えるかもしれません。旧作すなわちアリスの過去話(ていうかこれだけで一つの話としては十分かもしれないレベルなんだけど)と、現代の話の間に。

と言うのも、過去話は、アリスがいろいろなものを得ていく感じの話だから。世界に出て、人形遣いに師事して。それが語られるのが、全体四章のうち第二章と第三章。第四章冒頭で、神綺とアリスが出会った際のことが綴られてるのも含めて、そういうイメージを喚起する。

過去話は過去話で、一つの完結のかたちを見ているのですね。アリスは世界に出ていろいろなものを得て、最終的に失ってしまったものもあるけど、この先がんばっていきましたはいおしまい。……といった感じに、これはこれで、ある種の正しさを孕んだというか、それほど違和感の無い結末ではあるのです。

だけど現代において物語は再開する。師のもとで(以前に比べたら)強くたくましくなっていったはずのアリスは、それらをどこに忘れてきてしまったのかというように、卑屈で、臆病で、弱くて、自分からどんどんぼろぼろになっていきます。これなんも考えずに見ると何か違和感あったんだけど、(続く)

でもまったく当然のことなんですね。なぜなら、この物語のアリスにとって、旧作と現代の境にあったものは、孤独でしかなかったから。

百四十一番目のアリスが精神的な死を発現。前体までとの有効な差分無し、即時消去。(作中七十七ページより)

あの過去話は、「得たものも失ったものもある、だけどがんばっていくよ」ではなく──実は「得たものはあるけど、失ったものが大きすぎる」終わりなのですね。アリスの実感として現れてはいないから、この本の中で描写されることは無いけれど。

なぜならあの終わりのあとで、アリスには誰も残らなかったから。

過去話から現代までの間に、アリスにはおそらく百を超える死があった。(作中五百二十七ページとか参照) アリスによって語られる部分に比べて抽象的に描かれてるのでなんとなく読み飛ばしたくなっちゃうけど、そこのところ前提しておかないと、過去と現在が入り混じったこの話の理解がぐにゃぐにゃ。

過去話ラストでは、アリスのそれまでの繋がりが切れてしまうことがすごく強調されている。現在時点のアリスはとっくのとうに壊れていたのであって、なるほど第一章で永琳の元に向かったのは、とんでもなく正しいことに思える。

閑話休題。メディスン治してくところは読んでて面白かったな……あのへんはどちらかというと、アリス視点よりメディスン視点で物語を咀嚼し、想像している自分がいました。おそらく人形遣いよりも長く生きていく、人形の物語。メディスンもなかなかありやね……。

マリアリ……いやアリマリ? としてもド直球なので、カップリング好きな人も読める話だと思う……というかここまでマリアリアリマリっぽくなるとは思ってなかったので、正直ちょっとびっくりでした。魔理沙かわいい。

氏の既刊は「少女と少女と少女の偽」のみ既読なんですが(例大祭で既刊全部買ったのでたぶんそのうち読む)、前作に存在した、キャラ作成へのある種の公平性のようなもの(日本語適当)はちょっぴり薄れてる感があるかも……だから悪いとは言わないけど、そこらへんやや驚きつつ読んでましたとさ。

氏が霊夢視点で書くお話とか、読んでみたいなあと思うのでした……上手い作者さんには、霊夢を描くことを期待してしまう。

あと、伏線……というか、作中での物事の関連付けかな(スクランに多かったようなやつ)。 けっこう頻繁に見られた気がするけど、さすがにいちいちはメモしてないので……再読した時には、まあなんとなくわかるだろう。

あえて一つ挙げるなら、裏表紙からしてそうであるような。(第四章ラスト) ……これは違うかもしれないけど、そうであるような気がする。

六十年前は全ての終わりを示していたけれど、同じ光景だというのに二人の弾幕は目映いくらいの始まりと、これからを示していた。(作中より)

つまるところ、そういうお話だったということ。この先は──世に溢れるマリアリ寿命ものみたいなあれこれが、あるのかもしれないしないのかもしれない。大丈夫だと言い切ることはできやしないけど、うまくできないかもしれないけれど、アリスの中に積もっているものはきっとあるから、みたいなお話。

とまれこんなもんでひとまず、「アリスのための物語」について、お終い。


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