くるくるばたばた

主に東方SSの解説や感想と、稀に漫画とかラノベとかその他。

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
東方SSメモ87
 創想話作品集87で気になった作品をメモしたり紹介したり。


「アーリーデイズ」(十把ひとからげ氏)

 妖よ。まだわからぬというなら言ってやろう。お前がなぜその者に執着しているのか。なぜ妖であるにもかかわらず、その者をとどまらせるのに、自分の身さえ顧みないのか。
 それはお前が、その者に「取り憑いて」いるからよ。自分で気がついてはいなかったの?妖は、自分の身すら顧みないほどに、他のものに執着を覚えることなどない。あるとするならば、それは、それそのものに、妖が「取り憑いている」からよ。

 こちらは後編。作品集78に前編があり。
 よくある幽々子の過去話……と一見そう思えるかもしれないけど、実は随所に斬新な設定が散りばめられていて、長いけどまったく飽きさせません。というか幽々子の過去話じゃねえ、妖忌の過去話だ。
 うん。……うん、言ってしまうと、斬新な設定が一番目立つ強みなんだけど。でもそれに振り回されることなくきっちり書いてきてて……なんというか、強度が高い。原作に直接繋がる主要な登場キャラとして何人かいるけど、そのうち紫と四季映姫が(おそらくはあの天狗も)、とても「らしい」。四季映姫の、柔軟さも含んだ頑なな強さや、紫の、少しばかり狂気を孕んだ有様が。

 この物語において、妖忌は、ほとんどの幽々子過去話でそうであるように、西行寺のお抱えの剣士をやっているわけではありません。常に幽々子の傍らにあるわけではなくて、だからすべてに関わることはできない。過去話だから結末もある程度約束されていて、幾ら斬新といえど、それまでを裏切ることはありません。
 その枠の中で、おそらく、他に比べてご都合主義を排していると思われる結末がやってきます。ハッピーエンド好きには、あんまり向かないかもしれません。でも、真っ直ぐ、誤魔化すことなく書かれた物語です。少々長めですが、一読の価値はあると思います。



「想造」(ulea氏)
 これ、なんかみんな鬱ってるらしいので楽しみにしてたのですけど、少なくとも、バッドエンドじゃないですよね。普通に、ごく普通に終わっただけで。何かが狂っているとしたら『蓮子』だと思うし、私達は研究員の側でウヘウへ言ってる方だよね。幻想郷万歳過ぎる。

 特に「幻想郷」を否定してるわけじゃなくて、否定してるとしたら「秘封倶楽部」で、その秘封倶楽部もまたそもそも狂ってるものとして描写されてるから、何か変なふうにネガティブな感想はまったく無かったです。研究員達も、間違ってるとは思えないもの。いや、『メリー』を好き勝手にしたり、嘘をついて結局公表するってのは悪役の仕事と思って間違いないけど、幻想郷に対して思ってることは私らと変わりないし。

 幻想郷を……いや、正確には秘封倶楽部をかな? ともかく、それを独り占めしようとしている『蓮子』を見て、醜く感じてしまう自分の発見。それだけで、このお話を読む意味はあった。
 あと、上手いなあと思ったのは、二人以上の研究員の会話が一つの「」内に収まってたところとか。ネタも含め、全体的に言って、すごく面白かったです。



・「妖怪博士の憂鬱」(すこぶる氏)
 オリキャラ主役。その人の名は、井上円了というらしい。
 寡聞にしてその人物のことは知らず、読み終えてから軽く調べてみたりしました。知らずとも普通に読めるよ、という意味でもあります。
 明治維新を経た文明開化の頃。近代化を成し遂げようとする日本では、しかしまだ、妖怪や様々な迷信、すなわち『不思議なもの』が信じられてもいたようで。井上円了は、それらを否定してやることで、いわば、人の心を近代化させようとしていた、みたいな感じらしいです。作中でこっくりさんが出てきますが、あれの原理を解明したのが彼である、とか。
 さてその否定というのも、頭ごなしに否定みたいなものではなく、きっちり研究し、科学的に解明することで否定した、と。その、きっちり研究した、という一面に目を付けたのがこのSSであるのでしょう。……本当に浅くしか調べられてないので、簡単にしかイメージできませんが。

 このSSで描かれる彼の内面には、なんだか親近感を抱いてしまいます。
 科学で解明されちゃうんなら、それは仕方ない。でも、調べて調べて調べて、それでも解明できないものがあるのなら、と。井上円了は、『妖怪』に関して調査した結果、偽怪、誤怪、仮怪、真怪の四つに分類したそうです。真怪と、現在の科学では解明できないものを、彼はそう呼びました。研究というのも書物だけでなく、日本中をまわっての実地調査をしていたそうです。ここに妖怪の否定以外の何かを見出すのは、すごく面白いと思います。
 少しばかり寂しい結末も、物語としてはとても好きな類のものです。素直に面白いSS、と言えると思います。




 他に楽しめたものとして、「東風谷早苗が解けない式」(みかんの国の住人氏)、「私は、ゆっくりになりたい」(じんのじ氏)、「幻想論理」(ぜろしき氏)、「スカーレットなファミリーのお話」(マンキョウ氏)、「毒の在渦」(百円玉氏)、「千、落陽」(いこの氏)の存在をメモ。


※ワタナベ氏の「孤独」シリーズは、完結したら読むかも。
※「彼女の黄昏とプラスチックダイアローグ」は完結したら一気に……。
コメント投稿
管理者にだけ表示を許可する

トラックバックURL
http://kurubata.blog58.fc2.com/tb.php/1182-4278a8fd

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。