くるくるばたばた

主に東方SSの解説や感想と、稀に漫画とかラノベとかその他。

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東方SSメモ112
 創想話無印で面白かった作品を、作品集ごとに個人的にメモしたり、なんかその作品集について適当に語ったりする記事。作品集112にて。
 スレに投げたレビュー(「作品集ごとに一気読んでレビュー」名義)の転載も入ってるかも。

『11%ハクレイガール』(胡椒中豆茶氏)
 高倉健似の阿求父が博麗の巫女になるお話だ。
 壊れギャグに見えるかもしれない。というか実際壊れギャグな面はある、の、だけど、他の人の読み方に何かを言うのはあまりよくないことだとは思っているのだけど、しかしそれでも、壊れギャグと、『そうとだけ』見るのはさすがに勿体無さが過ぎると思うわけで。このあたりは同作者の別作品『ラストプリンセス娘の挑戦』とかにも言えるのだけど。
 『ラストプリンセス娘の挑戦』『自称私立探偵○○○ 最後の事件』『ろくでなし』『探しもの、見失うもの、見つけもの』……私的には、この作者の長めの作品におけるテーマはわりと一貫しているように思います。
 すなわち、“世界を愛すること”。そして新しめの作品になってくるほど、“自分自身を愛すること”もすごく強調されてきてる。氏の作品には愛がある、みたいなことをかつて誰かが言っていまして、この読み取りはその受け売りなんだけども、たしかに、『愛』というのは氏の作品のキーワード足りうると思う。世界への、自分への愛を取り戻し、あるいは確認し、そっと胸の内にひそませて、これからもまた歩き続けてゆく……氏の作品は、本質的に、どうしようもなく王道な“再生の物語”なのです。
 そしてまた、初期状態としての喪失や絶望、それが何かに満たされてゆく過程、『こんな自分』にあんまりにも優しく語りかけてくる世界、……描かれる物語の切実さや誠実さ、それらを文章にそのまま乗せ、現すほどの技術も併せ持っている。氏の作品が評判高いのはこの辺りに理由があるのでしょう。
 ハクレイガールももちろん、この系譜の作品です。一つの読み方として、上述したような『愛』をキーワードにしたあれこれをオススメしたく思います。

 ところでもう一つ、もう一つ補足したいことがありまして……前半に比して後半がダレてきてるんじゃないかという意見がちらほら見られまして、それはある意味正しいんじゃないかとも思います。あのバトルはね、父の意志を、想いを、何よりも雄弁な形で見せ付ける、阿求の心に刻み込む(そして阿求は父の危機に自ら行動さえ起こす!)という意味で、存在自体は問題ないのですが、それにしても少々ダレてないか。おそらくその指摘は正しい。感覚的にですが、正直、私もそう思う。何かこのバトルは、ちょっと、変だ。
 なのでここは、父の対戦相手たるレミリアに目を向けましょう。
 具体的には、上で名前を出していますが、『探しもの、見失うもの、見つけもの』の中にちらりと見えます。

(以下『探しもの、見失うもの、見つけもの』より抜粋)
 ま、今のあんただから話しとくけどね、吸血鬼条約の事よ、あれって実は私が幻想郷に一人で来た時にちょっとばかしここの腑抜けた妖怪と遊んでやってたらね、八雲が超マジで私にかかってきたんだけど、なかなか骨のある奴でさ、私もつい楽しくなっちゃって、相手も年期の入った妖怪でしょう、ほんとに楽しくてね、ついついあいつを結構やばいとこまで追いつめてやったら、あいつ私をスキマとやらに閉じこめたんだわ、うん私の勝ちって事。

 閉じこめられたのにお嬢様の勝ちなのですか。もちろん私は聞き返した。

 いいこと咲夜、あんただってわかってるだろうけど、世の中には使ってしまえば100%相手を簡単に倒せてしまう能力もある、私の運命を操る能力もそう、八雲の能力もね、先にそういう能力を使ってしまえば、それは自分の負けを認める事でしかない、わかるでしょ。
 私にも八雲にも、相手を単に倒すというだけならそれ以上簡単な事は無いってこと、だから大事なのは倒すか倒されるかではなく、相手に勝つか負けるか、そしてあいつは負けを認めた。
(以上『探しもの、見失うもの、見つけもの』より抜粋)

 わりとこの作者さんは、設定やキャラクターを、そこまで厳密ではない感触もあるのですが、しかしわりと、「繋げる」タイプである節があります(たとえば同作者の『ろくでなし』内に、『ラストプリンセス娘の挑戦』に登場するまりなに関するものと思われる記述があったりします)。ひょっとするとこのレミリアも、と考えると、あのバトルをもう一つの視点で眺めることができるかもしれません。そうすることで、なんだか色々なものがぴったり収まる感覚があるかも(実はこの辺そこまで詳細に検証してないんで誰かまかせた)。

 ていうか胡椒中豆茶さん次作の投稿まだかなーっていうか帰ってきてくれないかなぁ……。ラスプリの続きとか霊夢さんが妖怪の男とできちゃった結婚する話とか見たいのですが……。

【五段階評価では分け足りないので百段階評価】83/100点



『親愛なる“幼年時代”さまへ』(こうず氏)
 うううううううううんこれはすごい。
 ぶっちゃけ理解できてる気はしないというか表面を掬い取れてる気すらしないんだけど、これはそういうものでいい。少しはなれたところから、真っ黒い、過度な輝きを持たない、冥い宝石を見つめているような、そんな感覚。そしてそれできっといい。
 こうずさんは、私自身全て読んでいるわけではなく、また感覚的な言い方で申し訳ないんだけど……文章がキラキラしてる、とまではいかなくとも煌めきが時たま見られるというタイプの方のような気がします(同様の印象はNさんあたりにも持ったりします)。これは単語選びのセンスなのか、それとも単語の繋ぎ、語りのセンスなのか……このあたりはきっちり分析したわけでもないのでわからないのですが。ただその分、と言ってしまっていいのか、リーダビリティを少々犠牲にしてるところがあるかな、とも(ただ、最近はわりと普通に読みやすく、そこまでリーダビリティ犠牲というわけでもなくなってきたかもしれない)。
 さてこの作品に関してですが……作者さん自身に文章煌めき度の上昇&リーダビリティ下降のアビリティがあるような気がするとは上述しましたが、この作品は、そのアビリティを極端に強化した文章によるものと思います。言葉、文章一つ一つをじっくり楽しみたい作品。けどめっさ読みにくい。その読みにくさは、お話のよくわからなさというか掴めなさ(上述したように私はこのお話を「掴んで」はいないです。フランドール・スカーレットを見つめている感じ)も影響しているのでしょう。
 でもね、よくわからないけど、よくわからないからダメって類のお話ではないような気がするのです。
 というか、この文章煌めき度の高さと、するりと飲み込ませてくれないお話が、“フランドール・スカーレット”と“幼年時代”を描くにあたって凄まじくマッチしている。ハンパなく読みにくいのは確かなんだけど、それでもたまにはこういう作品を味わってみてはどうかというかんじでオススメです(ああ、『味わう』という表現がすごくしっくりくる)。

【五段階評価では分け足りないので百段階評価】78/100点



『仮面舞踏会の夜に』(デルフィ氏)
 雰囲気が素敵、などと抽象的な言葉を使ってしまうのはレビュー(紹介)をするにあたってはわりと負けた気分なのですけども、いやしかし雰囲気が素敵。
 自分のなりたいものへと変わることが出来る幻想の仮面舞踏会。そこに招かれた、稗田阿求。この作品の彼女はパチュリーと『とても』仲が良いのですが、しかし基本的には幻想郷の誰しもとかかわりを持ち、そして一方誰しもと深いかかわりを持たないキャラと言えるであろう阿求の視点から見るこの仮面舞踏会は……『向こう側』の雰囲気を出してるといいましょうか。幻想郷においてすら幻想的な、非現実の空気。酩酊しているような、まぼろしを見ているかのような、淡い時間。そのような表現がとても上手。これは作者さんの文体、いやもうちょっと広義に、作者さんの小説の書き方とも絡み合って効果を出してると思う……ちょっと感覚に任せた言い方をすると、女性的なのですよね。文体やキャラの心情もそうなんだけど、何を文章として表すかのチョイス、目の付け所みたいなのが、すごく女性的。そのあたりが、良い意味でのふわふわ感に繋がってる気がします。
 ただ強いて言うならこの作品、阿求が見る仮面舞踏会を描いていたのが、当然ながら(?)仮面舞踏会を舞台にしたパチェあきゅへと移り変わってゆくのですが……個人的には、阿求が見る仮面舞踏会そのものをもっとじっくり描いてほしかったかもしれません、というかそれだけで一作あっても良かったと思うくらい。そのくらいに、この作者さんが書く、阿求が見る仮面舞踏会そのものというのが、見てて面白く、興味深かったので。
 とまあ、素敵な雰囲気を身にまとった良作でした。

【五段階評価では分け足りないので百段階評価】71/100点



『妖精たちの遠い夏』(blue_nowhere氏)
 妖精の一面。
 東方における妖精というのは、わりと毎日楽しそうに見えます。なんかいろいろ悪戯なり何なり好き勝手して、きゃはきゃはけらけら笑ってるイメージ。刹那的にはたしかにそう。
 なのですが、もう少し広く考えてみると……私たちにとっては、ときに残酷に思えるすら程度に『違った』生態であり、『違った』生き方をしてるんじゃないかなと考えることがあります。この作品は、私のそこのところの思考にするりと入ってくるものでした。もしかしたら作者が考えて欲しいのとはちょっとずれているかもしれない。この作品に「物語」がないわけではない、というかちゃんとあるのだけど、私はそこよりも、その物語を通して描かれてる「妖精のありかた」みたいなのに興味を引かれたから。三人称で、少しキャラから『離れた』感覚のある記述も、その演出に一役買っているように思います。
 読んでみて、妖精への思考がちょびっと広がった気がします。短いしオススメ。

【五段階評価では分け足りないので百段階評価】64/100点



 そのほか一言メモ。
『器物破損時に於けるセメダインの圧倒的有用性について』(nekojita氏)はいい感じの掌編ギャグ。
『悩める乙女は取り敢えず暴走した』(Hodumi氏)がいい感じに魔理沙ちゃんおっぱい
『Uを探して』(大根大蛇氏)がよい秘封倶楽部。
『LINE』(夢月みぞれ氏)が、ちょっとばら撒いた諸々を活かしきれてない感じもするけど、わりと素直に楽しめる紅魔館シリアス系。


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