くるくるばたばた

主に東方SSの解説や感想と、稀に漫画とかラノベとかその他。

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それがあなたの望むことなら
 せっかくエイプリルフールなので、新たに連載形式でのSSを公開しようと思いました。
 せっかくなので、ブログで公開してみることにしました。ええ、せっかくエイプリルフールなので。

 #-1

「二人とも、まだ来ないのか?」
 もう三度目にもなる苛立たしげな呟きに、マリアは苦笑を漏らすことしかできない。
 不機嫌をその顔に貼り付けている少女、三千院ナギの視線を追っても、目に入るのは、彼女達が待ち合わせた時刻の十分前を指す時計だけだった。椅子に座りながら、とん、とん、と彼女が指で膝を叩き始めてから、既に数分。そのリズムはいつしか、時計の秒針が奏でる機械音に合わせられていた。
「まあ、まだ時間まで十分もありますし」
「もう十分しか無いではないか。だいたいヒナギクの奴め、生徒会長だった頃は五分前行動がどうのとかうるさかったくせに……」
「……五分前だったら、まだ時間ありますよ?」
「ヒナギクは普段から五分前行動してるんだから、今日はさらにそれより五分前に来て当然じゃないか」
 言い捨ててナギは、壁に掛けられた時計にまた視線を戻すと、一分と進んでいないそれを認めてさらに視線を険しくした。まったく、と漏らしたのが耳に入る。その様を見てマリアが浮かべたのは、しかし今度は苦笑ではなかった。
 この待ち合わせに特別な意味合いは無い。いつものように年上の友人達と一緒にカラオケに行こうという、ただそれだけの待ち合わせだ。違いがあるとすれば、ナギが待っている二人──西沢歩と桂ヒナギクの二人にそれぞれ小さな用事があるというので、彼女達はそれを終えてからナギの屋敷に向かうということになっている、ただ一点のみ。それが長引く場合は連絡を入れることになっているが、今のところ二人は遅刻の一報を入れてきてはいない。時間はまだ十分もある。生真面目な二人が連絡を入れていない以上、二人ともが時間通りに来られると考えて差し支えない状況だと、マリアもナギも判断している。そしてマリアは、現在の状況がわかっていてしかしナギがこのような態度を取る、その理由を知っていた。
「お二人と遊びに行くのが、そんなに楽しみですか?」
 からかうような響きを含ませた問いへの返答として、ナギは椅子を倒してしまいそうな勢いで立ち上がる。「何を言っているのだ」「別に楽しみになどしていない」と顔を赤くして言い連ねるナギを軽くあしらっていると、部屋の入り口から、その扉を叩く音が聞こえた。
 西沢歩、桂ヒナギク、そして綾崎ハヤテの順に、三人が扉をくぐってくる。「遅いぞ」とナギが眉を吊り上げて詰め寄る寸前、その顔が一瞬だけ綻んだのを、マリアは見逃さなかった。



「じゃあ、行ってくる。五時間経ったら迎えに来てくれ」
「ナギ、そんなに歌うの?」
 ヒナギクの呆れた声を無視してナギがハヤテに笑いかけると、ハヤテも笑みを返した。
「……うう」
 脇からは、微かに呻く様な声。発生源である歩に目をやると、彼女は、微笑みあっている二人をじっと見つめているところだった。その表情がどことなく可愛いと思ってしまったことを内心で詫びながら、しかしマリアは彼女から目を離すことができない。二年にも及ぶ気持ちというものがどのくらいの重みを感じさせるのかはマリアには分からないが、少なくともそう簡単に消えるものではないだろうとは感じていた。
 だが、ナギから話を聞いたとおり、彼女はその感情を表に出すことは止めたらしい。ナギが「行くぞ」と歩き出すと、歩は何も言わずにただ小さく息を吐き、ハヤテ、ヒナギクと共にその後に続こうとした。マリアが肩を叩かなければ、そのまま退室していただろう。
「マリアさん?」
 訊きながら、しかしマリアの表情を見ただけで何かを察したらしい。頬をかきながら、「見られちゃったんですね」と苦笑した。「あの、西沢さん」とマリアが言い切らないうちに、歩はマリアの手を取って壁際まで引き、さらに顔を寄せる。
「ハヤテ君に必要なのはナギちゃんだっていうことはわかってるんですよ。だからハヤテ君はナギちゃんの傍にいることを選んだんですし。私も、きっちり振られちゃいましたし」
「……西沢さん」
 自分の想いの結末を口にした少女の、その表情に、マリアは驚いていた。
「でもやっぱり、習慣になってるっていうか、つい反応しちゃうっていうか……」
 あはは、と笑う歩。そこには、マリアが予想したような暗い影は無い。
 彼女がどのようにしてその気持ちに決着をつけたのか、マリアは詳しいところまでは知らない。だが少なくとも彼女は、ハヤテがナギの隣にいると選んだことを受け止め、理解し、納得している。そこまで考えたところで、マリアは、自分が歩に対して感じ始めているものが、羨望なのだと理解した。
「歩、マリアさんと話してるのって珍しいわね」
 歩を見つめていたマリアが聞こえた声に目を移すと、そこには、いつの間に戻ってきたのか、ナギと一緒に既に部屋を出たはずのヒナギクがすぐ近くまで歩み寄ってきていた。歩がマリアといるのが彼女の言葉通りに珍しい組み合わせのためか、ほんの少しの興味の色が伺える。
「あ、ヒナさん。いや、ハヤテ君とナギちゃんを、ついついそういう目で見ちゃうなって……ヒナさんは、もうそういうことは無いですか?」
「……へ?」
 無邪気に問う歩。対して、ヒナギクの動きは半端なところで止まる。
 この二人の関係についても、マリアは深くは知らない。ただ、親友と言っても差し支えないくらいに仲が良いことと、精神的な面で歩がある程度リードしていることは感じ取っている。ヒナギクにとっては不本意なのだろうが、このようなやり取りは慣れたものなのだろうとマリアは分析していた。
「……私は何も感じないわよ。まあ、ハヤテ君のロリコンが深刻化してるとは思うけど」
 一拍遅れて言い終えると、ヒナギクはすぐさま振り返り、「さあ、そんなのどうでもいいから早く行くわよ」と一人歩き出す。
 あからさまな態度についての感想は同じものだったようで、マリアは歩と顔を見合わせて苦笑すると、「ほら、早く」とせかすヒナギクの後に続く。一番前を早足で歩くヒナギクを追いかけながら、「やっぱりこのお屋敷、広いですよね」「そうですか?」と軽くやり取りしているうちに、屋敷の玄関部分である大広間に辿りついた。一足先に辿りついていたナギが、三人を腕を組んで睨みつける。
「遅い。ハムスターが迷子にでもなったのか?」
「なっ!? 誰が迷子になんて……」
「どーだか」
 時間を消費するのは惜しいとでもするように、ナギは歩を無視してそれ以上何も言わずに扉を開け、二人の手を取った。
「それじゃあ、マリア」
「ええ」
 ちらりと目を向けるナギに首肯を返し、マリアは、これから彼に話すことへと意識を向ける。どこから話そうか、どのようにして告げようか──ほんの僅かに高鳴る胸を押さえて、同時に、自分の高揚がそれ以上ではないことに安堵した。
「ハヤテ君」
 並んで歩いていく三人に手を振りながら、マリアは傍らに立つ少年に声をかける。彼が自分の方を向いたのを確認すると、小さく息を吐いて、始まりの一言を口にする。
「お話したいことがあるんです」



 #-2

 彼のことを、マリアは出会った当初から信頼していたわけではない。
 彼が誠実な人間であることはわかっていた。執事としての能力も申し分無い。彼の命を救ったナギに対する忠誠は本物であり、そのナギも、彼に対してこれ以上無い信頼を寄せている──信じて用いるには十分だったそれらのことは、しかし、信じて頼るには足りなかった。彼がこの屋敷に来た当時は、彼を辞めさせようとする執事長に賛成も反対もせず、マリアはただ、ナギがまた裏切られることだけは避けなくてはならないと決意していた。
「お話、ですか?」
「はい。あ、でもその前に、ハヤテ君に訊きたいことがあるんですよ」
 だが、それが変わっていたのは。綾崎ハヤテという少年に、いつからかマリアは確かな信頼を持っていて──しかし、それがいつからのことなのかは、具体的には思い浮かばない。
「僕に、訊きたいことですか?」
「ええ」
 彼にプレゼントをするために、ナギがバイトをすると宣言した時。彼の後押しを受けて、マラソン大会に向けて練習を始めた時。ナギの一時の感情によって売り飛ばされながらも、その危機に馳せ参じた時。
 記憶を遡っていくと、そのきっかけとなった出来事の候補がいくつかあることに気づく。だがいつかの夜、二人きりでビリヤードの勝負をしながらナギについて会話したことがその最古のものだが、それが果たして決定的なものだったのかどうかはわからない。それ以上詳しく思い出そうとしてみても、二人の仲を心配する自分はいつの間にかいなくなっていたということしか認識できなかった。
「答えられることなら、何でも答えますけど」
「答えてもらえなかったら、お話を始められないんですけどね」
「え、そうなんですか?」
「そうですよ。……ハヤテ君は覚えていますか?」
 ただ、一つの確信があった。それはマリアがハヤテと接しているうちに抱いたものであり、それを見出したことで、二人の爆弾じみた関係を見守ることへの不安は消えた。
「未来に期待したりしなければ、つらい思いはしない」
「え……?」
 ナギにとってハヤテが必要なだけではない、ハヤテにとってもナギが必要な存在なのだと。一方通行ではないその関係は、たとえ互いに寄りかかりあうようなものだったとしても、危惧していた張りぼてのそれよりも遥かに固い繋がりに思えた。
「空っぽのほうが、失うものがなくてすむ」
「それって……」
「もう一年くらい前ですよね。白皇の試験に落ちて、ハヤテ君が落ち込んで」
「……えっと、その節は本当にお世話に」
「いえいえ、たいしたことじゃなかったですし。……それよりも、確認させてほしいんです」
 その関係を容認することが、間違っていたとは思わない。
 幼い頃から、すぐ傍でその姿を見てきたナギ。
 近しい立場で、多くの時間を共に過ごしたハヤテ。
 他の誰よりも自分が、ナギとハヤテのことを知っている。マリアはその自負の元で、二人が並んで立つことを認めている。そしてそれは、ナギだけのためにではない。
「ハヤテ君は今、ほんの少しでもそう思いますか?」
 綾崎ハヤテが、前を向き続けられる理由。それに、気づいているかどうか。
 マリアが訊かなければならないことは、それだった。



 #-3

「……よかった」
 求めた答えを得て、マリアは呟いていた。
 嘘も、誤魔化しも無い。彼は、自分の言葉を自覚している。ナギの全てが報われたと、自らの目で、耳ではっきりと確認して、マリアは口元が緩むことを押さえ切れなかった。
「お嬢さまの受け売りなんですよ」
 左腕に着けた時計をちらりと見やって、ハヤテが苦笑する。
「『お前は、私の執事なんだから』って」
「まあ、ナギが……あの後に、ですよね?」
「はい。……全部、マリアさんがお嬢さまのことを教えてくれたおかげです」
「そんなことはありませんよ。ナギのことを聞いて、どうするか決めたのはハヤテ君自身なんですから」
 照れて頭をかいているハヤテを見て笑みを浮かべながら、マリアはその場で一八〇度回転し、ハヤテに背を向けた。ほう、と静かに息を吐いて、軽く目を瞑る。
「それじゃあ、私も……ハヤテ君にお話したいことがあるって言いましたよね?」
「はい……あれ、今のがそうだったんじゃないんですか?」
「いえ、違いますよ。それは、これからです」
 ハヤテに返しながら、思いのほか落ち着いていると、マリアは自分でも驚いていた。昨夜、ナギに同じことを告げた際の情けないほどの狼狽振りを思い返すと信じられないほどに、冷静でいられた。
 どうしてだろう──ハヤテに背を向けたまま、一歩、二歩と踏み出しながら考える。
 答えは、すぐに見つかった。
「ハヤテ君」
「は、はい」
 マリアが振り返って目を合わせると、ハヤテは僅かにたじろいだ。その間に体を正対させて真っ直ぐに向かい合うと、マリアは小さく息を吸った。それを告げる側の自分が冷静で、告げられる側のハヤテが慌てている──そんな構図が妙におかしくて、やはりマリアは笑みを浮かべていた。そうしながら、口を開いていた。
「私は、あなたのことが好きでした」

 ちなみにこれ、いつぞや書いたボツネタというオチです。続きません。あしからず。
 まあ、せっかくエイプリルフールだし。
温泉バンド嘘はないと思うんだ。別に、喜び勇んで見にいったりはしてないけど。
分かった! 続けないっていうのがエイプリルフールの嘘なんですね!(`・ω・´)9 オミトオシダヨ

 なんというか切ないですねー(´・ω・`)
 三人がそろってきたあたり、どんな小さな用だったんだろうとか、ハヤテの腕に腕時計がはまるまで、いろんなことがあって、その間に本当の信頼が築かれていったんだろうなとか、想像できて楽しかったです。
続けないのが嘘だと言えればよかったねー(´・ω・`)
 あんなくるとわかりきってたネタに私が騙されるわけ無いじゃないか、うふふ。るろお先生はほら、なんかのゲームのデザインで忙しかったはず。

 温泉バンド……(´・ω・`)



 このSS、なんでボツにしたんだっけかなあ。
 それぞれのキャラの解釈が、この時のものからさらに動いたからか……ナギとマリアとヒナギクについては、これを考えた時より、いくらか先に進んでるし。……先に進んでるといっても、実質進んでないのかも。

 まあこのボツネタは、かつてはそれなりにマジになって書いたものですし、私の読み方の断片とでも思っていただければという感じでしょか(´・ω・`)

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